過敏性腸症候群とは、大腸に腫瘍や炎症といった病気がないにもかかわらず、腹痛や腹部の張りなどの違和感、便通の異常が数か月以上にわたって続く状態のことをいいます。英語表記のirritable bowel syndromeの頭文字をとって「IBS」とも呼ばれます。
統計上は、10人に1人程度が過敏性腸症候群に悩まされていると考えられており、その予備軍である「下腹部痛」の症状がる人は6人に1人ともいわれています。男性より女性の方が多い、特に20~30代の方に多い、年齢を重ねるごとに症状を訴える方が減ってくる、という特徴があります。
過敏性腸症候群は、便通異常のタイプから「便秘型」、「下痢型」、「混合型」、「分類不能型」の4つのタイプに分類されます。
便秘型は便秘症状が主となるタイプ、下痢型は下痢症状が主となるタイプであり、混合型は下痢と便秘を繰り返すタイプです。分類不能型は、他の3つのタイプに当てはめることが難しいタイプを指します。
過敏性腸症候群の原因は、はっきりとはわかっていません。現在有力なのは、ストレスなどの精神的な緊張により腸が知覚過敏になる説です。緊張や不安でお腹が痛くなるというような経験をされたことのある方もいらっしゃるかもしれませんが、ストレスや緊張、不安な状態が続くと、腸の収縮運動が激しくなったり、痛みを感じやすくなったりします。
次に考えられている原因は、腸の炎症性疾患にかかることです。腸炎など、腸に炎症が起こると腸の粘膜が弱くなったり、腸内細菌が変化したりします。大元の原因は前述のような精神的な緊張とは違いますが、感染症にかかった後でも、運動と知覚機能が敏感になって便通に異常を来す場合があります。
ほかにも食物アレルギー、脂肪分の多い食事や炭水化物、乳脂肪分の多い食事など消化に負担のかかるものが、過敏性腸症候群の引き金になっている可能性があると考えられています。